かんだ

東京都
2021
ミシュラン三つ星、連続15年の老舗料理店の新規店舗設計は、今までのカウンター9席と個室1室の席数を増やすことなく、接客空間に余裕を持たせること、露地風の庭を併設すること、玄関と待合の部屋を設けること、カウンター裏側の調理スペース動線計画を合理的に整えること、個室客の為の専用入り口、などが慎重に検討され設計された。

重要なカウンター材としては春日杉の良材を使い、店主の立ち位置の背後には床柱として伝正倉院伝来、菱形天平古材を思い切って使用した。

カウンターを照らす照明は料理が際立つこと、店主の立ち姿が引き立つことを考慮して、点光源の無いディフューズされた面光源とした。露地風庭には大井戸枠の古材を据え、あたかも名水の井戸があると言った風情を醸し出した。また稲荷社を据え、社殿が苔庭に浮く細く長い庭は杉皮塀で三方を囲い、都会にありながら清閑な空間を演出した。

全ての家具は特注で、特にカウンタースツールは鉄芯に竹を被覆したもので、吉田五十八的感性を本歌取りしたものだ。壁にかけられるアート作品はすべて杉本作品として空間と呼応させている。特に玄関入り口には檜フレームの「華厳滝図」を掛け、凛とした「気」が流れ、空間を満たし、稲荷社に迎えられ、古井戸へと流れゆく気配を勧請した。

杉本博司