M邸

東京都
2021
海外在住歴の長い施主が作られたヨーロッパを基調とした設えのマンションの隣室を、立礼の茶室として新たに改装したものである。茶室は本格的な茶事ができることを考えて、待合、露地風坪庭、蹲、水屋、懐石用カウンター席及びキッチン等が仕組まれている。

テラスを改装した坪庭には「捨音流社」(シャネルシャ)と命名された社が置かれている。この名は令夫人が常にシャネルで身支度をなさることにより私が命名した。「捨音流社」を坪庭に持つ茶室として、静謐な茶室をイメージして茶室名は「寂流庵」とした。令夫人はシャネルの似合う物静かな御婦人だ。

懐石の席はカウンター割烹としても使える席とした。この空間は茶を中心とした社交の場として、また外国人の招待客を招く文化交流の場としても意識されて設計された。

家具もすべて設計し、特に待合の為の長椅子席は、アクリル厚板と硝子板が合体する透明異素材唐突合体作品とした。

杉本博司